国際標準化戦略が科学技術立国である我が国にとって重要であることは言を俟ちません。世界貿易機関( WTO )のTBT協定は、規制・規格が各国で異なると国際貿易の技術的障害( TBT )となることから、国家標準は可能な限り国際標準を尊重することを規定しています。そのため、国際標準化に主導的に参画することは産業競争力を強化する上で重要です。電子分野などを除く一般的な工業分野の国際標準化は、国際標準化機構( ISO ) が担当します。ISO には、我が国からは日本産業標準調査会( JISC )が加盟しています。各種産業技術分野の国際標準規格の開発は専門委員会( TC )の下で行われます。
ISO/TC 201( 表面化学分析:Surface Chemical Analysis )とTC 202( マイクロビームアナリシス:Microbeam analysis )は共に1991年に設立されました。これら二つのTCに対応する国内審議団体として、JISC 傘下に表面化学分析技術国際標準化委員会( JSCA )が1992年に設置されました。JSCAは企業・団体会員からの会費や経産省からの委託費・補助金等により運営されています。国研、大学、企業などの我が国を代表する表面化学分析・電子顕微鏡等に関連する計測分析技術の研究者や技術者が委員として参画されております。2018年に、JSCA は一般社団法人化され、標準化に関する活動の幅を拡げました。JSCA では、プレ標準化段階での国際ラウンドロビン試験、ISO における国際標準( International Standards)の作成、関連する日本産業規格( JIS )の作成、ならびに普及のためのアウトリーチ活動などを推進しています。
TC 201の所掌する表面化学分析は、材料の表面や界面における化学状態や組成を原子層レベルの分解能で調べる分析法です。オージェ電子分光、X線光電子分光、二次イオン質量分析、グロー放電分析、走査型プローブ顕微鏡、X線反射率測定・全反射蛍光X線分析、生体材料表面分析などが含まれます。ISO における表面化学分析法の国際標準化に大きく貢献したのは、1982年のベルサイユサミットで合意された「 新材料と標準に関するベルサイユプロジェクト( VAMAS ) 」です。最初の技術作業分野 ( TWA ) の一つとして表面化学分析(TWA2 )が採択され、1980年代からラウンドロビン試験を用いたプレ標準化研究が積極的に行われました。VAMAS-TWA2の成功を受け、表面化学分析に関するTC の設立が日本からISO に提案されました。以来、TC 201の幹事国業務はJISC( 日本 )が担当しています。
一方、TC 202の所掌するマイクロビームアナリシスは、材料や各種製品の微小部分析法です。電子線マイクロアナライザ、分析電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、後方散乱電子線回折などの微小部分析技術が含まれます。TC 202の設立は中国が提案し、TC 201と同時に承認されました。そのため、幹事国業務はSAC( 中国 )が 担当します。マイクロビームアナリシスに関わる計測装置や分析法は、我が国の研究者・技術者のレベルが世界的に高く、また、電子顕微鏡 関連分野など、国際市場でのシェアが比較的高い分析機器メーカーも多いことから、我が国が国際標準化を先導することが重要であり、参加国からも期待されています。そのため、分科委員会( SC )の幹事国も複数担当しています。
国際標準化提案や幹事国の獲得において、欧米先進国のみならず中国や韓国などの新興国も非常に積極的であり、我が国も活動の戦略的な強化と標準化人材の育成が重要です。JSCAは、表面化学分析分野、ならびにマイクロビームアナリシス分野における国際標準化を担う若手人材の育成にも積極的に取り組んでおります。
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